がんばれアッキー!

 防波堤建設を進める政府を批判、LGBTの人たちへの共感、脱原発、反TPP・・・。「神様に動かされている」と語り「家庭内野党」と言われながも日本中をひた走るのが安倍晋三夫人のアッキー(昭恵さん)だ。『週刊現代』(2016年11月12日号)での小池百合子さんとの対談で、アッキーは「「日本を取り戻す」ことは「大麻を取り戻すこと」」と語る。大麻というものは神様とつながっているもので、霊力の高い、波動の高い植物だと言う。大麻の栽培はGHQによって禁止され、その状況が現在も続いている。だから、大麻を栽培することで本当の日本を取り戻さなければならないというのがアッキーの主張であり「私」を生きるのが、スピリチュアルなナチュラリズムとしてのアッキーのアイデンティティである。

 現在のナチュラリズム文化の基礎を創ったのは、1960年代のアメリカ西海岸で、既成の社会体制や価値観を否定し、脱社会化や精神の開放を目指したヒッピー(自由人)の若者たちだ。
 ヒッピーは合理主義よりも精神世界や自然との融合などが志向される。ロックやドラッグ、東洋の神秘思想、日本の禅、ネイティブアメリカンの世界観など、人間が本来持つ自然な関係に回帰し、精神の開放をうながすものが称揚されていく。そして、近代産業社会に対する否定的な態度を取るコミューン運動のようなものが世界中に拡大していった。
 これが新宿を中心に起こっていたビートニクス運動などと呼応して、1967年には長野県の富士見高原に「カミナリ赤鴉族」、鹿児島県トラカ列島に「ガジュマルの夢族」、東京・国分寺に「部族」によるコミューンが誕生した。国分寺のロック喫茶「ほら貝」ができたのが1968年。ナナオ・サカキ、山尾三省、長沢哲夫、山田塊也といった人たちが主導したが、それはドラッグ文化やスピリチュアルな精神世界と密着していった。

「いつか」 ななお さかき

真冬の太陽 沈むころ
日本海の磯づたい
福井県美浜原子力発電所
つづいて 拘束増殖炉 もんじゅ 訪ねた次の日
荒れ模様の空 明けて
1月13日正午 原発銀座
敦賀駅のホームに 列車を待っている

雲みだれ 雪しぐれ 風はためき
鳥たちとまどい・・・ ふいに
グワーン バリ バリ
まなこ くらます 閃光
耳つんざく 轟音

オオ カミサマ ホトケサマ
ショック どっと
冷汗 どっと

ありがたや あれは カミ カミ
雪さまの ゴロゴロ

ありがたや あれは
原子力発電所の爆発鳴らず

だが いつか ・・・

「ひとつの事実 ―スワミ・アーナンド・ヴィラーゴに―」 山尾三省

ヨーギ・バジャンは言う
人間よ あなたは自分自身のなかに内在する神である
行ってそれを悟りなさい
これはひとつの事実である

夕闇の山の上に
新月と金星が並んで 静かに光を放っている
僕の心は濁りに濁っていたので
こんな光景を見るのは久し振りのことである
これも ひとつの事実である

僕は 弱いもの 悲しいもの 侮辱されているものの側にある
それ以外のものではなく
それを光とし 希望ともしている
だから究極には 涙がある
これも ひとつの事実である

僕たち 弱いもの 悲しいもの 侮辱されているものは
心を合わせて
核兵器でも 原子力発電所でもない
静かな小さな幸福の時を 迎えたいと願う
これも ひとつの事実である

ヨーギ・バジャンは言う
人間よ あなたは自分自身のなかに内在する神である
行ってそれを悟りなさい
これはひとつの事実である

 アメリカにおけるコミューンは、1987年のカルト的リーダーが率いる「人民寺院」の集団自殺事件以来下火になるが、1990年代から再び増加、カルト的なものに代わって、ツイン・オークスのような合議制で運営される組織が再び増えている。
 ツイン・オークスは、心理学社B・F・スキナーが書いた小説『ウォールデ2』の影響を受けて、1967年に8人のメンバーによって設立された。ツイン・オークスが長い間存続できている理由は、共通する宗教や政治理念もなく、リーダーもいないからだ。ツイン・オークスを動かしているのはメンバーたちの話し合いで、ツイン・オークスのメンバーが共通して遵守しているルールは「平等、分け合うこと、非暴力」の3点のみだ。
 彼らはまったく新しい価値観を打ち立て、新しい社会を作ろうと行動を起こした。物質的な豊かさが幸せという考えを放棄し、年金付きの老後生活といったエサを目の前にぶら下げられ、わき目もふらず走りつづけされる人生を放棄し、人と人とのふれあいのある人間らしい暮らし作りに自らの人生を賭けた。その思想には共感するか否かはさておき、彼らの断固とした行動力は経済の高度成長時代も終焉し、格差社会を生きる日本人にとっても示唆するところが多くある。

参考文献:『ツイン・オークス・コミュニティ建設記』キャスリーン・キンケイド(明鏡舎)

(2021年2月10日)

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