『ユキの日記』 『二十歳の原点』 『卒業式まで死にません』 など詩集と同じ様に日記本も数多く読んできた。夭折者の残した日記本は、その話題性もあり当時ベストセラーになったものも多く、いまでも読み継がれている。山田花子の『自殺直前日記』もその中の一冊だろう。
山田花子とは80年代から90年代始めにかけて活動していた漫画家で、92年2月に統合失調症で入院、「詩人・鈴木ハルヨとして再出発する」と日記に書いたが、退院翌日の5月24日に飛び降り自殺した。『自殺直前日記』は生前メモ魔であった彼女の、残した日記やメモ類を刊行したものだ。
学生時代からつげ義春や泉昌之のガロ系の漫画が好きで、時代は少し違うが、同じ専門学校でグラフィックデザインを学んだという接点もあり気になる存在だった山田花子について考えてみた。
精神科医の石川元は『隠蔽された障害』で、山田花子が非言語性LD(自閉傾向のある発達障害)であり、「こころの持ち方や努力だけでは変化せず、なぜ自分の言動がいつも対人関係の場で裏目に出るのか理解できず、「困った人」「不可解な人」と受け取られ、いじめや無視のターゲットにされた」と結論付けている。
また、編集者とのトラブルもについて「山田花子が悩んでいたのは「オチがないことではなく「オチがないと言われる」ことに限られました。知的にはきわめて高度であるにもかかわらず、オチを付けることで対人交流を円滑にするという、並の人間なら自動的に行えるはずのことができないという欠落に自分では気づくとこはありえないでしょう」と書いている。「脳」の問題を「こころ」の問題として意識をして我慢すべきことだと考え、いじめっ子を恨みながらも自分を責めて続け、そのために二次的に情緒障害を悪化させた。
グラフィックデザインの道に進んだ自分だが、創作活動をするなかで行き詰まったり落ち込んだり、人を恨んだりしている。誰しもみんな、山田花子であり山田花男なのかもしれない。精神分析学の草分けである古沢平作博士が「人間みんな病人です」と、言うように。
残念なのは、才能があった彼女が違う世界で表現できなかったことだ。
(2017年7月21日)