岡崎里美

岡崎里美(おかざきりみ)1954〜1971
11歳の頃から預けられていた祖父母の自宅で、岡崎里美さん(17歳)はビートルズのレコードを大音量で鳴らしながらガス自殺した。岡崎さんは名古屋に生まれた。7歳の時、両親は離婚。しばらく父親と一緒に暮した。やがて母親が岡崎さんを引き取った。高校を中退してからは自分の居場所を求め、詩を書き、ビートルズを聴いた。デザインスクールに通っていた岡崎さんはバイト先のスナックの常連客である男性と同棲するようになった。恋人は病気がちであったため、岡崎さんは学校にも行かず働いていた。そして恋人とせっせと貯めた睡眠薬を飲み、ガス栓を開いたのである。岡崎さんが13歳の頃から書きためた30冊のノートは、死後「岡崎里美17歳の遺書・愛なんて知らない」(槙出版)として刊行された。

『愛なんて知らない』岡崎里美(槙出版/1972)
『自殺への序曲』岡崎里美(光風社書店/1974)

【ひとごみ】
これほど自分がコドクに感じることはない
人間というのはいつもひとり
でも人間はひとりということを
感じるのがきらい
こいすることはそこからうまれてくるのか
友達・・・・
たしかにいいものだ
悪い奴でも良い奴でも
でも、何が自分のそばにいようが
やっぱりヒトリなんだ
強く生きたいと思う
生きていきたいと思う
でも生きるってのは何なのだ
誰かを本当に心の底から
あいしてみたいと思う
でも あいするってのは何なんだ
何をしても誰といても
やっぱり人間はヒトリなんだ
そんな人間っていう生きもの
さびしいとおもう

【Blue Summer】
青い夏
ベッドの舟の中で
恋をして
それから
ウィスキーをひっかけて
暑さにうだりながら
白い歩道を
あるいていく
青い夏
午後になると
ひとりぼっちで川のふちにたち
“なんて暑いんだ”
ってつぶやき
舟の上へ
アムールをしに
帰っていく
どこまでも続く
白い歩道
いつだって
ひとりだった
・・・・・
青い夏